unitX運営のコンペで開けた世界。挑戦前には想像していなかった未来へ

トレードワルツでデザイナーとして働く中尾詩夏さん
トレードワルツでデザイナーとして働く中尾詩夏さん。シャイな彼女には似顔絵の提供をお願いしました。

2022年2月21日にunitX運営のもと開催された「トレードワルツ学生デザインコンペティション(以下:コンペ)」の最終審査会で、見事グランプリを受賞した中尾詩夏さん。翌3月に大学を卒業し、デザイナー として新たな一歩を踏み出しました。コンペを主催した株式会社トレードワルツへも、兼業メンバーとして仲間入り。今後の活躍がますます期待されています。

実は、グラフィックデザインは独学だったという中尾さん。今回のグランプリ受賞の背景には、さまざまなコンペに挑戦してきた中で得た、多くの学びや気づきがあったとのこと。そんな中尾さんのこれまでの取り組みや、トレードワルツで1か月間働いた感想についてインタビューしました。

株式会社トレードワルツは、貿易DXを推進するスタートアップ企業です。NTTデータや三菱商事を始めとする国内大手10社の共同出資のもと、2020年4月に設立しました。紙をベースとしたアナログ貿易の完全電子化を目指し、ブロックチェーン技術を活用した貿易手続きの完全電子化プラットフォームを運営しています。
https://www.tradewaltz.com/

求められているものをデザインする

――まずは自己紹介をお願いします。

多摩美術大学のプロダクトデザイン専攻に4年間在籍し、この4月からはフリーのデザイナーとして、活動をスタートしました。今は週3日トレードワルツで働いているほか、自作のオリジナル商品をオーダーメイドで販売したり、プロの編み物デザイナーさんが開く塾で服について学んだりしています。「もっと学びたい」という気持ちが強かったので、特定の会社には就職しませんでした。

――デザインについてはどのように勉強されてきたのですか?

大学では入学時から一貫して立体物のデザインを学んでいました。素材や技法 について実験をし、今までにはない新しいデザインを提案していく、ということをしていたんです。皆さんがよく目にするデザインとは異なり、奔放なデザインと言ったら分かりやすいでしょうか。(笑)

コロナ禍でアルバイト収入が途絶えてしまった中、デザインのお仕事につながったり、賞金がもらえたりするコンペに応募し始めました。その多くがパンフレットやチラシ制作だったので、それを機にグラフィックデザインを学ぶようになったんです。

最初の2か月は毎日応募していたのですが、60件中1件も受注できなくて…。でも、毎回振り返りをして、その中で得た気づきを自分の中に落とし込みながら挑戦を続けていたら、少しずつ仕事の依頼がくるようになりました。

仕事をするトレードワルツデザイナー中尾詩夏さんのイラスト
コンペ応募後は、振り返りの時間を大切にしていたそう。

――具体的にはどんな気づきがありましたか?

一番は、「依頼者が求めているものをちゃんとデザインする必要がある」ということですね。最初の頃は、「自分はデザインができるんだぞ!」という、エゴが見え隠れしたものを作っていて…。でも、実際に選ばれた方の作品と自分のものを見比べる中で徐々に、真に求められているものが何か分かってきたんです。

それに気づいてからは、制作前に依頼者へヒアリングをしたり、分からないことは積極的に調べたりするようになりました。どういうものが求められているかをクリアにして、それを踏まえて制作するようにしてからは、先方のリアクションもかなり変わりましたね。

未来のかたちが変わるかもしれない

――なぜトレードワルツのコンペに応募しようと思ったのですか?

1つは、学生最後の集大成として挑戦してみようと思ったからです。もう1つは、会社の事業内容に惹かれたからですね。送られてきた資料を見たときに、自然とデザインのイメージも湧いてきました。

“貿易DX”と聞くと難しい印象を受けがちですが、「紙書類を電子化する」「フルリモート勤務を実現する」というのは身近で分かりやすい課題だと感じました。一方で、それが影響する範囲の広さにも圧倒されて…。「もしかしたら未来のかたちが少し変わるぐらいの影響力があるのかな」という想像が、頭の中でどんどん膨らんでいって面白かったです。

――トレードワルツの会社案内パンフレットを制作した感想や工夫したポイントを教えてください。

一言でいうと、大変でしたね。そもそもブロックチェーンという単語すら知らなかったので…。(苦笑)

工夫した点は、「貿易の未来」を軸にしながら、「広がり」と「立体感」を意識したことです。写真の見開きを大きく使ってスケール感を出し、読んだ方に想像してもらう余地を持たせました。パンフレットを読んだ人の頭の中で、「想像がかき立てられるような状態」にすることを特に意識していましたね。

――最終審査会はいかがでしたか?

他の参加者の作品を見て、もっと遊び心を持たせても良かったのかなと思いました。私はどうしても、「ちゃんとデザインしなくては」という気持ちが強く、堅くなりがちなんです。一回、ガッと突き抜けてから戻ってくるくらいでも良かったように思います。

トレードワルツを舞台に、挑戦を続ける

――約1か月間、トレードワルツで働いてみていかがですか?

いろいろと挑戦させてもらっていて、純粋に楽しいです。パンフレットやプレスリリース用の画像を作ったほか、国際商業会議所(ICC)英国委員会が主催した「ICCデジタル貿易カンファレンス」への参加に合わせた、アイコンやバナー、動画制作にも携わりました。最近はこれまで以上に、自分のプロダクトを世に出すことへの責任を感じています。

その一方で、チームで働く良さも実感していますね。チームの皆さんが何重にもチェックしてくださること、気軽に相談ができる人たちがいることで、のびのびと働けています。社会に必要とされながら創作活動ができるトレードワルツは、私にとってすでに拠りどころのような存在す。

――今後、トレードワルツで挑戦したいことを教えてください。

以前から、ブランディングに興味があって…。これまで請け負ってきた単発のお仕事は、会社案内を作っても納品したら終わりで、もどかしさのようなものを感じていました。トレードワルツでは社内のデザイナーとして、エンドクライアントの反応を見ながら、いろんなアプローチをしていきたいですね。

トレードワルツデザイナー中尾詩夏さんの写真
コンペでグランプリを受賞した会社案内パンフレットを手にする中尾さん。

――最後に、デザイナーやクリエイターを目指す学生にメッセージをお願いします!

個人的には、どんどんコンペに挑戦してほしいですね。コンペは学生限定のものも多く、お金もかからない一方で賞をもらえたりお仕事につながったりと、可能性が一気に広がります。仮に選ばれなくても、それは別に自分が否定されるわけではなくて「たまたま相性が合わなかっただけ」と思うようにすれば、気持ちも楽ですよね。

あとは、他人に自分の作品を見てもらう、第三者の頭の中で作品を転がしてもらうことで新たな気づきや発見も得られます。“これはこういうもの“と作っていたものが、まったく異なる用途で求められることすらあって、面白いですよ。学生の皆さんには、せっかくあるチャンスを積極的つかみにいってほしいなと思います。

取材:岡村未来、文:中條ふみ